隣り合った歯の間に食事の食片が挟まるのは煩わしいものである。
専門用語では「食片圧入」という。
挟まるのが歯と歯の間に限られていれば、違和感や歯が浮いた感覚程度であるが、挟まり続けたり大き目の食片が挟まったりすると、歯と歯肉の間に食片が食い込み、さらには食片が歯周ポケット内に食い込む。こうなると、歯周ポケット内で炎症が起こり痛みも強い。
食片圧入の痛みで歯科医院を訪れる方は意外と多い。
挟まった食片を取り除けば症状は落ち着くが、繰り返していると、ますます挟まりやすくなる。
では、何故挟まってしまうのか。
原因は、挟まりやすい食片の性状と挟まりやすい歯の側の条件にある。
挟まりやすい食片はイカや肉、野菜などで筋のような線維性の物が多いと思う。
挟まる側の歯は隣り合う歯と歯の接触面にむし歯がありくぼみができている場合、もっとむし歯が進行して歯冠の部分が崩壊している場合には、その部分に食片が食い込み、非常に挟まりやすくなる。
むし歯がなくても、歯並びが悪くて歯と歯との間に段差がある場合もその段差が、歯と歯の接触が弱かったりすると食片の食い込むきっかけになりやすい。
また、歯周病のため歯がグラグラしていると、咀嚼(そしゃく)により潰された食片がグラグラしている部分から歯と歯の間に食い込みやすいことがある。
むし歯や歯周病が原因であれば治療が必要だ。
挟まった食片が、ようじや歯ブラシで簡単に取れる程度で、むし歯がなければすぐには問題にはならないかもしれない。
しかし、同じ部位に頻繁に挟まった状態が続くと、むし歯が生じたり、口臭の原因となったり、歯と歯肉の結合状態が悪化し、気がつかないうちに歯周病が進む場合がある。
だからといって、歯間部に食片が挟まっても慌てることはない。
自分でデンタルフロスや歯間ブラシなどの補助的器具を使うことで除去できる場合も多いからだ。
実際、筆者もむし歯がなくてもどうしても挟まり易い部分があり、フロスの使用は避けられない。
しかしデンタルフロスや歯間ブラシは慣れないと面倒なものである。
自分が正しく使えているか判断しかねる場合には、歯科医院で継続的な指導を受けるのがよいと思う。
(平成26年1月25日・日経新聞・国立病院機構東京医療センター歯科口腔外科医長大鶴洋・「ヘルスこの一手」から)
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