自主防災会長として南海地震に備える

184号 吉村二郎(須崎市) 

 未曾有の大災害となった東日本大震災に伴う大津波。
 高知県でも近い将来必ず起こると言われている南海地震への備えが大きな関心ごとになっています。
 とりわけ今回の津波でも2m79pと西日本一の波高を記録し注目された須崎市では、市内各地に自主防災組織をつくり行政と市民が一体となって災害に備えた取り組みを行っていますが、ここでも電友会員の仲間が先頭に立って活躍しています。
 吉村二郎さんは昭和20年生まれの66才。
 懐かしい言葉となった「搬送部門」で長年勤務され、設備部四国SOセンタを最後に退職、生まれ育ち人生のほとんどを過ごした須崎市で暮らしています。
 取材で須崎市にお邪魔すると、屋上駐車場が緊急避難場所に指定されている量販店で、高知電友会幹事市川秀幸さんとともに笑顔で迎えてくれました。
吉村さんが現在会長を務める「西町自主防災会」は組織化を進める市役所の呼びかけに応えて平成15年、西町常会(町内会)の中に結成されました。
 未だ発足していない地区もあり、市全体の自主防災「連合会」が組織されたのが平成21年だということからも、西町地区の取り組みが先進的であることが窺い知れます。
 初代会長から吉村さんが引き継ぎしたのは丁度退職前後の平成21年からで、常会長と防災会長を兼務して獅世帯の生命安全を守る先頭にたっています。
 吉村さんは4月初旬のNHKテレビ番組「四国羅針盤」に地震学者らとともに出られていたので、ご覧になった方も多いと思います。
 「防災会連合会長からの紹介がきっかけで取材を受けるハメになった。」とはにかみますが、各地防災会のなかでも模範的な活動をされている表れでしょう。
 防災会の役割と活動は「災害の危機感を持ってもらうよう知識を付与することです。 防災マップを全戸配付し、年間2回の防災訓練を行っています。」。
 防災マップには指定避難所への避難経路を矢印で示すなど、地元住民ならではの細かな智恵と情報を盛り込んでいます。
 災害用伝言ダイヤル171の案内もしっかり載っていました。
 市街地でもお年寄りが多く、世話役自身も高齢になってきており深刻な課題となっています。
 町内に2か所指定されている避難所の一方は険しい石段続きの小道を上がった寺院です。
 量販店屋上の避難所へは駐車場へのスロープを使います。「避難訓練で車椅子を押し上げましたが1人では全然ダメ。2人がかりでやっと動かしましたがそれでも重くて大変。実際にやってみてこそ判りました。」と、訓練の大切さを語ってくれました。
 避難指示あろいは避難勧告の津波警報が出ると、市内各所に設けられた防災行政無線のスピーカーで一斉周知されます。けれど「反響して内容を聴きとりにくかったり、屋内に居れば気付かない。」という問題も。実際にはテレビで流される警報で先に情報を得ることが多い。 
 また「勧告」はまだしも、「指示」が発令されると直ぐに避難しないといけないのですが、区別できない市民もいるようです。
 須崎は古くは白鳳地震から江戸時代の宝永・安政地震と、度々南海地震による大津波の被害を受けた歴史があり、近年では58名の死者を出
した昭和21年の昭和南海地震津波と続きます。
 けれど被害の様子を語る経験者は既にほとんど居ません。吉村さんも、「昭和35年のチリ地震津波の時は同級生の家屋が被害を受け、流れ込んだ材木などの後片付け支援に学校から行った覚えがあるが、南海地震津波の時は生まれたばかりで勿論記憶に無い。」と話します。
 先の東北大震災大津波の際は、「報道されているように、避難率はあまり高くなかった。量販店屋上駐車場に避難した市民は停めたマイカーの中で寒さを凌いだ。高齢者などのために量販店の好意でエレベータホールに暖房器具が置かれ、午前2時ころまで心細い夜を過ごしました。」と話す。
 市川さんはNTT須崎ビル背後にある城山公園避難所から、須崎港口に建設している巨大防波堤に押し寄せる津波を目撃し、「沖合から海面の色がザワザワと変わって来るのが見てとれた。幸い防波堤で弱められていたようだが凄かった。」と語ってくれた。
 市街地のあちこちに、「今度の津波はここまで」と、次の南海地震津波の予想水位を警告する標柱が道路標識の様に立っている。その位置は路面から3m以上(場所によっては4m超も)。
見上げる高さに、もし津波に襲われたらと恐怖心が募る。東北の惨状を教訓に、須崎市でも次の南海地震津波の被害想定と対策を根本的に見直す動きがスタートしている。この予想水位も上方修正され、避難所も変更されるかも知れない。
 吉村さんの周辺でも、日常の付合いの中で津波対策の話題になるなど、感心は高まっているそうだ。「これからは、学校での災害教育が必要じゃねえ。」と、家族ぐるみの防災活動を重視することばで締めくくってくれました

トピックス 184号掲載