ポンカンつくってネット販売    アマチュア無線で防災に一役 
197号 藤戸勇輔さん(室戸市) 
(取材 大野文平) 

 藤戸さんは昭和18年生まれ、9月で71才になりました。昭和38年に入社し室戸局や安芸支店で主に料金や窓口の業務に携わり、35年勤続後の平成11年、老親介護のために早期退職、「先祖から受け継いだ農地でポンカンと野菜を作り、趣味のアマチュア無線もし、健康を維持していこうと頑張っているこの頃です」と語り始めてくれました。同居する百歳になられた母上は、ほぼ寝たきりの車椅子生活ながらご健在。保育園長を退職された奥様とともに母上の介護をしながら、農園管理と様々な世話役に忙しい毎日を過ごしています。
 ご自宅は、室戸市吉良川町の太平洋を目前に望む海岸段丘 『西山台地』 にあります。
「二百年前の山内藩政下に、家老深尾氏の先導で先祖達が入植し開墾した」標高100〜150メートルの台地に排水の良い農地が広がり、現在では約60戸がさつま芋、ポンカン、なす・ピーマン・トマト等施設園芸を主要作物として農業を営んでいます。台地には田畑の水源確保のため大小約30のため池があり、「草刈など、地区の共同作業で維持している」そうです。
 藤戸さんが20aで栽培するポンカンの昨年の収量は約5トン。「そのうち3割強をレンタルサーバーでネット販売しています。ほとんどリピーター客で、後払いですが焦げ付きはありません」ということで、信用を得て良いお客さんに恵まれています。『藤戸農園』または『味と香りのポンカン』で検索してみてください。
 こだわっているのは 『食の安全』。量販店から出る食品残さを原料とした有機ぽかし肥料をいち早く取り入れ、現在もポンカンの根元は敷き藁で覆う手間を掛け「雑草・害虫を防ぎ、消毒を少なくするようにしています」 と話します。 野菜は大根20a、馬鈴薯20a、キャベツ10a、人参10aに作付け。道の駅『キラメッセ室戸』の楽市と、産直品を取り扱う業者を通じて県内外に出荷しています。この業者とは契約栽培に近い取引で、「妻と二人での耕作には作付面積が広すぎ、楽しみながら野菜等を作ることでの健康維持からは少し荷の重い感じですが、『藤戸さんの作る野菜は美味しい。何時頃できるの?』と言われますので、作付面積を少 なくしたいと思いながらも ままならない状態です」と嬉しい悩みも吐露してくれました。
 さて、藤戸さんといえばアマチュア無線。「右肩右膝を打摸して整形外科に20日間入院した時に、退屈しのぎにアマチュア無線免許試験の勉強をして、昭和56年に免許を取得しました」 とのこと。
 「以前に職場の同僚に誘われていた」事がきっかけになったようです。そして合格後は早速アマチュア無線局を開局し、以来144MHz帯中心に楽しんでいます。「本来見通し距離の直接波による通信なのですが、一時的にできる特殊な電離層の反射で東北や沖縄など遠い所と交信できたら嬉しいねえ」と、顔をほころばせます。そして後日交換するQSLカード(交信証)も大きな楽しみのようです。
 無線免許を取得した年に、社団法人日本アマチュア無線連盟=JARLに加盟。監査指導委員などを経て、平成20年にはJARL高知県支部長に選ばれて無線仲間の世話役をしています。
 アマチュア無線の大事な役割に、災害で一般の通信手段が利用できない場合の、非常通信があります。阪神大震災や東日本大震災でも活躍し、県内でも過去に通信途絶した地域で情報伝達に役立った例が有るそうです。JARL高知県支部は放送各局等とともに『高知県非常通信協議会』 の幹事団体となっており、毎年の高知県総合防災訓練に参加して、被災状況伝達習熟を図っています。「去年の訓練は宿毛市であり、事前打合せに5回も自費で通った」とぼやきますが、けっして嫌がってはいない様子。災害は起こって欲しくないですが、無線仲間の皆さんの備えは力強いですね。
 JARLの役員会やその打合せだけでも年間十数回有るほか、NTT労組退職者の会高知県協議会幹事さらにNTT室戸OB会の世話役などを務められ、日々忙しい藤戸さん。
 「こう雨が続いては畑の準備ができん」 と嘆きながら見せてくれた倉庫には、芽吹いて植付直前の馬鈴薯の入ったコンテナが10個以上積まれてあり、身体の休まる暇はないようです。
トピックス 197号掲載