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第195掲載      .

 さくら
      武内和子(高知市)

無人島の草を刈り 年に二日
島に上れる日がある4月5日,6日頃
朱色の桟橋から船は一粁先の島へ
そくら見物の人を乗せて運ぶ
窓のない客室に座らず
風に煽られて海を眺める人々
王者の名を馳せた海賊の
水軍伝承太鼓が 明日はドドンと
鳴らされるだろう
宴もはじまる頃 コンテナに積んだ
瀬戸のサカナが これから大鍋で
料理されようとしていた
再び漁協の港から海に出ると
ちょうど 午後2時の引潮時
海面は脹れあがって捲くれてゆく
潮は輪唱のように海鳴りの渦を連ね
白波しぶく船折れの瀬戸から
ぼんぼりの島を行き交う人に 私は
両手を大きく振って来た
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